地産地消とCSA

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地産地消」は、あなたにもおなじみの言葉でしょう。

地域で生産された農林水産物を、その生産地域で消費する取り組みであり、直売所が「代表的な場」です。

生産者が地域の加工・販売事業者と組んで商品化する「(地域)6次産業化」も盛んになってきました。
しかし、「地産地消」が地域人口の減少のなか、地域活性化につながっている事例はそれほど多くはないでしょう。

そこで課題として指摘されるのは、地消する消費者の対象を定住者や観光客等だけではなく、地域外に広げ売る「他商」が大切ということです。小規模の消費では、生産者は事業を続けられません。

広く売れるには、生産者が「何にこだわり他とどう違うのか」=差別化を打ち出すことであり、安価・新鮮さだけでは消費者は振り向きません。
生産者には「マーケティング力」が求められるのです。

そう感じていた私は、このあいだ偶然ある本を手にし、これは参考になると、今回あなたに紹介します。

その本は、「農業大国アメリカで広がる『小さな農業』」、サブタイトルは-進化する産直スタイル「CSA-、著者は河北新報記者・門田一徳さん(家の光協会発行 2019年5月20日)。つい最近出版された本です。

この本のキーワードは、食べる人(消費者)と作る人(生産者)をつなぐ「コミュニティー・サポ-テッド・アグリカルチャー」=「CSA(コミュニティー支援型農業)」という取引手法です。アメリカでは、オーガニック食材等を直接取引する手法として定着しています。

アメリカの農業と聞くと、広大な農地に小型飛行機で種をまき、ブルドーザー型農機で一気に収穫するイメージではないでしょうか。

しかし、こんな大規模な生産をしている生産者はほんの一握りで、巨大農場数(800㏊以上)は4%。全体の7割が家族経営の小規模生産者です(といっても約72㏊未満で日本とは比べ難いですが)。

では、アメリカの7割の小規模農場は、大農場とどう渡り合っているのでしょうか・・・。

それは、殺虫剤・除草剤・肥料等を使わず、野菜を栽培するオーガニック、新鮮さ、完熟度、顔の見える関係性など、小規模だからこそ出来る「消費者との信頼関係づくり」を実現することです。

その小規模生産者と消費者がつながるプラットフォームとしてCSA(コミュニティー支援型農業)があります。

運営は主に生産者や生産者団体で、消費者は気に入った生産者のCSAに会費を払って入会。受け渡し日に教会や公園・企業他の会場で生産者から受け取ります。方法は大きく分けて2つ。

「マーケットスタイル」はスーパーの棚のようなケースから会員が自分で野菜を選びます。もう一つ「ボックススタイル」はあらかじめ10種類程度の新鮮・完熟野菜が入った段ボール箱等を受け取るもの。

アメリカでは、流通から販売まで一手に請け負っている日本のJA(農協)のような存在がありません。だからこそ、発展してきたアメリカのCSA。

そこで私は、JAはCSAをもっと研究すれば、組合員と消費者をつなげる新たな取組みを見出せると思うのです。

私の意見は次回に伝えます・・・。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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