「コロナの時代の僕ら」を読む

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自粛で在宅時間が延び、並行して読書時間も延びているようです。
SNSで、お気に入り本を紹介する動きも目立っています。

私は、最近27カ国で緊急出版された話題の「コロナの時代の僕ら」(2020年4月25日初出版)をあなたに紹介します。

本書は、30歳後半という若手のイタリア人作家パオロ・ジョルダーノが、母国で大規模な感染が始まった時期(2月末~3月頭)に書き下ろしたコロナ関連の27本のエッセイをまとめ出版したもの。

彼がコロナ関連で書いた記事が大きな反響を呼び、続けて非常事態下で書き綴られた痛切で誠実なエッセイがこの本です。

各エッセイは、それぞれ味わい深く、126ページの分量なのであなた自身で読んでいただくことにして、私の心を捉えている大きな二つのことについて述べます。

【エッセイを書いた理由】
まず一つは、彼がこのエッセイを書いた理由についてです。
それは・・・「コロナウイルスが過ぎた後も僕が忘れたくないこと」を書き残すため

彼が恐れていることは・・・
この大騒動が過ぎてしまえば、みんな何事もなかったように元の生活に戻ってしまうのではないか。

私の言葉でいえば、みんな、半強制的に自粛という名の「自宅隔離」をさせられ、ようやく解除となったら「解放」気分で思う存分パチンコをしよう、居酒屋で仲間と楽しく飲もう(私もそうですが)等、元の生活感覚に戻ってしまうのではないか。

しかし、彼は言います。今始まったばかりの「コロナの時代」、即効性のある科学知識ではなく、「どう生きていきたいのか」をみんなで真剣に考えよう、と。

たとえば、こんな問いを発してみよう、と提案します。
「コロナが終わった時、本当に僕たちは以前と全く同じ世界を再現したいのだろうか

そこで、ジョルダーノは「忘れたくないリスト」づくりを読者に勧めます。
お互いのリストを見比べ、共通項目があれば、そのために何が出来るか考えてみるがいい。

この本の最後の一章は、日本版に特別に掲載された文章で、彼は「僕は忘れたくない」
ことを連呼します!力強い文章で、是非読んでください。

【なぜ「コロナの時代」は始まったばかりなのか】
私が心に響いた二つ目は、なぜ「コロナ時代」は始まったばかりと考えるのか。これから何度となく繰り返されるのか。その考え方が心にズシンときたのです。

彼はこう述べます。
環境に対する人間の攻撃的な態度のせいで、新しい病原体と接触する可能性は高まるばかり。

病原体にしてみれば、ほんの少し前まで、本来の生息地でのんびりやっていただけなのに。

森林破壊、そして進む都市化(密集化)
多くの動物は絶滅し、その腸に生息していた細菌は別のところに引っ越さねばなりません。

増殖する人間の胃袋を満たすために作られた家畜の過密飼育は、細菌にとって培養適地であり、雑多な微生物の増殖地なのです。

近時、アマゾン川流域の熱帯雨林で起きた途方もない森林火災が何を微生物にもたらしたか、誰にもわからない。

また、オーストラリアでの野生動物の大量死は一体何を引き起こすのか。どれだけの微生物が新たな宿を急いで探しているのか。そんな時、なお増え続ける動物は・・・人間だけです。

細菌・ウイルスが人間にとって病原体となったとき、こんなにも感染しやすく、多くの仲間とつながりどこにでも移動する人間は、病原体にとってこれほど「理想的な引っ越し先」はありません。

以上のジョルダーノの見解から、はっきりと読み取れることがあります。
それは、「人間と細菌・ウイルスの戦争ではない」ということです。

うまく折り合いながら、病原体を沈静化させ、人間と細菌が共生していく道を探るしかないと思います。

人間が森林等の自然の住みかを奪えば奪うほど、人間自らの体内を住みかとして提供するしかなくなるのです!

「コロナ時代」の始まりは、年齢や国を超えて「人類という動物がどう自然の中で他の生物とともに生きていくべきか」という根本的な問いを共有すべき時です。

この根本的な問いは、いわゆるテレビに出てくる「専門家」だけに任せるわけにはいかなくなりました。
私たち「一人一人への問い」であることを自覚しようではありませんか。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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