上田市には、6酒蔵と11味噌蔵があり「発酵のまち上田」を標榜しています。
昨年、待望のワイナリーが設立され、発酵食品の基軸が揃ってきました。
5月から6月にかけては、田植え作業の真っ盛り。
その風景を眺めながら、私はここ数年「酒米づくり」に注目しています。
「稲倉の棚田」(日本棚田100選)で生産した酒米を使って醸造した日本酒づくりの取り組みは、ドキュメンタリー映画になり、海外の映画賞をいくつも受賞しました。
他にも市内各地で酒米が作られています。
ただ、酒造会社が原料の酒米を仕入れるというスタンスであり、その酒が地域のコミュニティづくりに役立つという視点は欠けているように思います。
ようやく昨年、真田地域の戸沢地区で、一定量の酒米が確保できたことから(タンクを満たす量)、地域の皆さんが飲み合いながら連帯を深めました。
今年はクラウドファンディングによる資金調達にも挑戦しています。
地区の地酒を楽しみながらコミュニティ(地域社会)づくりをする贅沢な取り組みに期待が高まっています。
そこで、改めて上田市内の酒米・日本酒造りの取り組み(把握している限り)を数えてみました。
生産は5地区で、醸造は4酒蔵です。
そのうち、3地区では生産者グループが地区名を表示した酒瓶で酒を酌み交わし連帯を深めており、あとの2つは新たな取り組みに挑戦中。
一つは、温泉地の休耕田で、地元旅館若手経営者中心に取り組み、酒蔵で醸造して酒屋で販売。
銘柄の関係で、表向きはっきりとした地区産名は表示できないとのこと。
しかし、今年は量を確保し、地区産名を明示し、各旅館のお客様に飲んでいただき誘客につなげたい、との希望を持っています。
そこでしか飲めない希少性の高い酒として、アピールしたいですね。
二つ目は、今年初めてトライするケースで、酒蔵がIT企業社長と組んで酒造りをおこなうもの。この社長は米づくりもやっていて、独特の「布団農法」で作っているのです。
種もみを挟んだ綿を敷いて、米を育てる。雑草は綿を突き抜けられずに枯れる除草効果があり、イネだけが生えてきます。綿は土に戻るので、無農薬栽培として安全&美味しい。
IT企業社長は酒米への挑戦は初めてで、それも女性杜氏と組む話題性もあり、さてどんなお酒になるのか、今からとっても楽しみです。
そんな、上田市の各地域で多様な作り手による日本酒が存在し飲めるのは、ワインと同じようにテロワールを味わうのと似てはいないでしょうか。
一言でいって 『とっても贅沢』 と思うのです!
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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