コロナ状況下、好調な直売所に聞く(下)

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前回(7月1日)のブログで、コロナ禍の逆風下、市内で好調な単独型直売所の話を書いたが、その続きである・・・

【売上増加を主導したNアドバイザーの取り組み】
彼の話をベースに私の経験も加味して、単独型直売所の売上げアップを図る基本的な考え方と対応を、5点指摘したい。

①直売所は薄利多売
地域住民を主なターゲットとする直売所は、地域住民に奉仕するため薄利多売が基本。

直売所は、日常の食をアシストする場であり、多くの方に買ってもらうためにも、買求め易い価格設定が基本。加えて、生鮮品はロスを出さずに売り切ることが採算面から重要。

逆に、商品はその地域に無い生鮮品や加工品も補充し、午後の棚を満たして顧客の来店を促す。

②顧客との対話重視
直売所のお客はお年寄りが多いので、レジの若い女性担当者と会話すれば楽しく親しくなれる。

お客様と積極的に会話するよう指示し、親しくなると3日にあけず来てくれる方(固定客)が増えてきて、やりがいを感じ直売所の空気が変わる。

③自信を持って商品を売る
生産者は自信を持って価格設定をする(そのための相談にのる)。他スーパーより高く、または安く売る場合もあるが、お客さまに納得して買ってもらうことが重要。

仕入れた加工品等は必ず自ら買ってた食べてみる。レジ係にも食べてもらう。お客さまとの会話で「これは美味しい」と伝えられ、一気に距離が縮まる!

店員全員に商品原価も知らせ、値段をつけさせてみる。「自信を持って全員で売る」という意識づくりや一体感が大切。

④目標は必達
売上目標と実績は朝礼で話し全員で取り組む。目標に達しない場合は、みんなで必達を目指し、簡単にギブアップしない。

⑤スー-パーに無い賑やかさ
他直売所間との相互品揃えや、食べるもの(お焼きや焼きとり等)は顧客を引きつけることから、扱い事業者と連携する。

月1回開催の朝市は、賑わいを演出し集客力アップに役立てる。
朝市の鉢花の限定プレゼントは人気。


直近の朝市では、焼き鳥や豆腐、五平餅、おやき、ほう葉巻き、という多彩な品揃え。わかめ詰め放題という楽しさに、包丁や鎌の研ぎというすきまニーズを満たす独自性が魅力だ。

以上、この直売所の5つの売上好調要因をあげたが、どれもコロナ禍という大きな不安を消し去る特別な取り組みとは言いがたい。むしろ、あたりまえな取り組みを愚直にやっている

顧客である地域住民が、コロナウイルスという命に関わる疫病にさらされる中、安心・信頼して買い物が出来る直売所とはどんなところか。

品揃えは直売所間で補給し合って多彩な商品を扱い、店員と顧客が楽しく会話する空間が自宅の食材庫や台所の代わりとして使えるところだ。

その直売所の運営に関わる人は、生産者と消費者との出会いの場を賑やかに演出し、持続可能な場づくりに汗をかける人。

そう、一言でいって「熱く、人と人をつなげる人」である!

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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