一通のメール

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ある朝、私は職場に行き、パソコンのメールを開いた。いつものことだ。

何通かのメールを見ていると、「突然のメールでのご連絡、失礼します・・・」という文章が目に飛び込んできた。心臓がドキッ!

深呼吸して読み始めると、事態がのみ込めてきた。おおよそ、こんな内容である。

「4月末にクラフトビール事業について相談に伺ったIと申します。実は、一緒の方との計画は見合わせることになりました。

クラフトビール事業は一人でもやりたいのですが課題も多く、事業を始めたいが造り手を探している方がいれば、自分のような人間がいることを伝えてもらいたい。」

相談時は、一緒の方が主に話し、Iさんはほとんど話さなかったので、そんな強い思いがあったとは気づかなかった。そして、感心したのは文章の締めくくりだ。

「一度お会いしただけの方にこんなメールを送るのは失礼かな、と思いつつも一縷の望みをかけてご連絡しました。

厚かましく一方的なメールで申し訳ありません。頭の片隅に置いといていただければとても嬉しいです。お忙しいと思いますので、特に返信は不要です。」

読んで、私の心にうかんできた感情は・・・”なかなかヤルナ~”
この方は頭がいいし、相手を尊重しつつ自らをアピールする術(すべ)を知っている。
行き会ったときは、そんな感じは全くなかったのに。

「特に返信は不要」と書かれれば、儀礼的なやりとりはご無用、お互い時間を有効に使いましょう、というクールな意味のメッセージとも読める。

さて、私がとった行動は・・・即座に短く返信

「メール、有り難うございます。拝見しました。Iさんと直接話し、必要情報を確認したいので、今週の都合のつく日をお願いします。」

翌々日、Iさんはプロフィールを携えてやってきた。
私はIさんの履歴書を見つつ尋ねると、意外な情報を含め語ってくれた。

県内の大学を卒業後、何社か勤め、一人で海外に旅に出たこと。結婚し、最近まで県内のブルワリー(ビール醸造所)でビールの醸造に関わり経験豊富なこと等。

私に突然「一通のメール」をくれたのは、元バックパッカーで行動力抜群の人だったのだ。

すぐに、紹介したい事業者とのセッティングをし、今後両者が継続的に関わることとなり、速攻で話が進んだ。こんなつながりを、「ご縁」というのでしょう。

また、並行して、市内の温泉地とクラフトビールをつなげ、若い人たちを引きつけられないか。その一歩として、早速クラフトビールの基本的な勉強会を持った。

飲み比べるクラフトビールの種類はIさんにお任せ。ビールをどう持ち込むか心配したのだが・・・。
車で持ってきて、列車で帰り、翌日車をとりにくるという。さすが元バックパッカー。

Iさんが講師役で7人ほどが集まり、数種類を飲み比べながら、基本的な知識「エールとラガーの違い」「IPAやピルスナーとは」ほかを学んだ。
参加者から「思いっきり楽しかった」との感想をもらう。

上田市は、「発酵のまち上田」を掲げ、さらなる展開を目指している。
すでに、日本酒や味噌、甘酒の蔵は少なからず存在する。

そして、女性の造り手や料理研究家が市内の女学生に発酵の基礎を教える「信州上田・発酵の女学校」を立ち上げ活動中。

ブルワリーはまだ市内にはない。クラフトビール事業が公になり進展していけば、近い将来、女学校の講師陣にIさんを加えられないかと、教頭の私は秘かに思っている。

Iさんは、30歳代の素敵な「クラフトビールの女性造り手」なのだ!






この記事を書いた人

長谷川 正之
アグリフードビジネスアドバイザー

□1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、長男としての責任を感じ故郷・長野県の農林系金融機関に就職。在職中は、融資や資金証券運用業務ほかに携わる一方、企画業務では「中小企業診断士」の資格を活かし経営戦略(経営理念の策定含め)を立案し事業展開を図る。54歳時に、「上司の顔より真理の顔を」という言葉に出会い、「ソロで力量を磨き、パーティーを組んで更に高い目標に挑戦していく!」意識を自覚。思い切って選択定年で退職。
□55歳で一念発起し、政策研究大学院大学政策研究科まちづくりプログラム(修士課程)に学び、ダントツの高齢者ではあったが無事「公共政策修士」を取得。 
□56歳で長野県庁の民間登用試験を受け、任期付職員として採用(課長級:農政部農産物マーケティング室企画幹)。県農畜産物の統一ブランド「おいしい信州ふーど(風土)」を玉村豊男氏と共に創設し普及。6次産業化推進や「信州ワインバレー構想」策定等にも関わり、任期満了につき退職。
□61歳で上田市農林部農産物マーケティング推進室・専門員に採用。「発酵で輝く上田のまちづくり」を提唱し、民間の「信州上田・発酵の女学校」等の設立を支援。上田市の統一ブランド「信州上田なないろ農産物」を創設し、地産地消を強力に推進。講演では「尊農上位論」を熱く説く。現在、ながの農協非常勤監事も務める。
□地域活動として、地元小学校PTA会長、さらに当時の小学校連続殺傷事件発生に際し地域で自主防衛すべく歴代PTA正副会長会(ビーナス会)を組織し現在会長。「地域の子どもは地域で育てる」を合い言葉に実践中。春・夏休みには、町内児童館で本の読み聞かせを楽しく行っている。
1995年阪神淡路大震災時には、友人の落語家や中学同級生たちといち早く復興支援寄席を開催。以降、高齢者福祉につながればと坂城寄席を継続開催中(現在休演)。地区の自治活動にも積極的に関わり、来年は区長を担う。コロナ禍や自然災害多発のなか、自治会(区会)が自治体(町行政)を構成する確かな「共同体」の仕組みを作りたいと意欲を持つ。
今後、「中小企業診断士」「公共政策修士」の知識・経験を活かし、さらに地域に貢献したいと前を見すえる。紆余曲折の人生のなかで培った多彩な人脈が自らの強み。
□趣味は落語鑑賞。好きな言葉として 「上に立つより前に立つ」 「スピードが感動を呼ぶ!」「笑いで輪(和)来!」「他人の言葉を気にして生きるには人生は短すぎる!」。
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