【食べてみたかったぶどう「真沙果」】
食べてみたかった上田産オリジナル品種のぶどうをようやく食べた。
長野県が誇るぶどう栽培の達人・飯塚芳幸さん(上田市在住)が交配から手掛けて創ったオリジナル品種「真沙果(まさか)」。
2018年デビューしテレビ等に取り上げられ、注目を集めている。「まさか、こんなぶどうがあるなんて」との本人の驚きも込めて命名したとのこと。
数量は限られ高価なので首都圏の高級百貨店や菓子店等にしか出回っていない。地元でもなかなか食べられないのだ。
この飯塚果樹園のぶどうは、「真沙果」を含め強いブランド特性を持っている。 飯塚さんにはまだ会えないでいるが、公にされている情報から取捨選択してあなたに紹介する。
【強いブランド特性とは】
〇顧客の感性に訴求する
訴求要件はネーミング、物語、パッケージ、デザイン、接客ほか。このぶどうは、ネーミング=「真沙果(まさか)」、物語=「条件不利地を克服し一人で新品種育成」が突出している。
〇独自性があること
過去に例が無いから、大変だからこそ挑戦するという強い思いから「違い」が生まれる。飯塚さんの土地は、強粘土で水はけが悪く水田にしか向かない。ブドウは根が張れず、すぐに根腐れしてしまう。
そこで諦めず、大変な苦労をする中で、土づくりには良質な有機質や微生物がキーと着目。微生物の活性を高めた堆肥による有機栽培を進め「土との対話」を実践。
今では1haを超す広さの圃場はすべて化学肥料・除草剤・土壌消毒材等を一切使わず栽培。「種なしで皮ごと食べられる巨大粒」は、都内の高級百貨店で個人の「ぶどう特別コーナー」が設けられるほどの高評価。
彼の信念は、「人の都合じゃない。微生物が作る健全な土と根。それが美味しいぶどうづくりの鍵」であり、「ぶどうは有史以来さまざまな品種や遺伝子を掛け合わせており、今後もどのようなものができるかわからない意外性があり面白い」というあくなき探求心である。
〇情報発生力
「個人の栽培農家がオリジナル品種を育成」という高品質で希少性が報道したくなる価値である。 さらにいえば、マスコミが報道として取り上げるには、品質を超えた「とんがり(尖り)」が重要。
尖るとは、大の上に小と書く。尖っていれば小さな生産者でも大きな生産者を越えられる。飯塚さんと「真沙果」は典型的に尖っている。
〇口コミ発生力
ブランド名は短く発音し易いもの。アップル、ナイキ、ヤフー、トヨタ、あまおう他、どれも4文字以内。「まさか」も3文字。消費者が伝えやすく、覚えやすい。
【食してみる】
農林水産大臣賞に加え、県知事賞を7度受賞の飯塚芳幸さんが経営する飯塚果樹園の希少種ぶどう5品種のテスト的なパック詰めを過日入手し食す。
オリジナル品種2、希少品種2,シャインマスカット1 。どれも糖度が高く、皮ごと1粒づつ味わえ、かつカラフルで幸せ気分。大きさと言えば、このパックは大小さまざま・・・。
なるほど、ここのぶどうは「尖」っているだけに、「大」粒も「小」粒も入っているのだ。ガッテン!
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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