先ごろ、棚田の視察に関わった。
同じ「日本の棚田百選」で飯山市にある「福島新田」に視察に行き、2ヶ月後、逆に飯山市から上田市・「稲倉の棚田」への視察を受けた。
一般に、上手くいっている視察先に行くと、パンフレット等の資料を説明してもらい、関連施設をまわり関係者と質疑して終わり、ではないかと思う。
悩んでいる共通事項があれば“同じだ”と納得・安心し、上手くいっていることは“自分たちと置かれた条件が違うから”と自らに言い訳して、結局は持ち帰る発見や気付きは少ないのが往々にしてあるパターン。
今回は、先方がいろいろ聞きたいことを事前に整理して交流し、効果的な視察であったと思われる。
そこで、「先進地視察時の着眼点」について考える。視察に行って「自らに問うクエスチョン」だ。
【着眼点1.成功の背景にある本質は何か】
棚田維持の担い手は、高齢化しており同じ悩みを持っている。
が、福島新田からの視察者は、稲倉の棚田が外からの若い人材を求め、「地域おこし協力隊員」として受け入れ貴重な戦力として活躍していることをつぶさに見て、刺激を受けたようだ。
「稲倉の棚田」が問題を抱えつつも上手くいっている本質的なところは、ボランティアの地域住民と外からのやる気ある人材が上手く融合し、お互いにカバーし合って「共同体」を形成し取り組んでいることではないか。
そして、その共同体をまとめる「長(おさ)」が存在し、合意に導いているのだ。
【着眼点2.先進地にできなく自分たちにできることは何か】
上田市の稲倉の棚田は、眺望が素晴らしく、その立地を活かして棚田米や酒米のオーナー制度、棚田CAMP、ししおどし祭り(イノシシの被害回避の祭り)他で外からの人たちを引きつける。
一方、福島新田は、比べて眺望はあまり期待できない。
しかし、独特の歴史を醸し出す石積みの棚田で、水車小屋やそば打ち施設があり、「そば」という信州の代表的な伝統食が体験できる。互いにないものを確認し合うことが重要だ。個性に気づき磨くことが大切。
【着眼点3.成功事例の逆を行く方法は何か】
上田市の稲倉の棚田は、上信越自動車道菅平インターチェンジに近く、車で東京から3時間はかからない。
稲倉の棚田を目当てに眺望を含め充分楽しみ、市内を回ってその日のうちに帰れる。「日帰り型棚田」といっていい。チョット時間ができたら行ける存在。
対して、飯山市の福島新田は、東京から豊田飯山インターまで3時間30分程かかり、そこから結構時間を要す。日帰りで行くには遠い。
ならば、「飯山を楽しむツーリズム」の一環として、日帰り型に対して「宿泊型の棚田」として位置づけたらどうか。
宿泊セットなら、食観光の地域資源が活きる。戸狩温泉や鍋倉高原、寺や神社巡りほか、飯山盆地の多彩な四季と相まって充分楽しめる。
【差別化は、その地にしかないもの「美味しい飯山のお米」】
何より、お米が美味しい。米・食味分析鑑定コンクール国際大会で毎回飯山の米生産者が金賞を受賞しており、長野県の中でも飯山の米の評価は特出している。
首都圏から来て、福島新田の清涼な空気を吸い農作業を手伝って、この地の美味しいお米のおにぎりや漬物を食す。
こだわりたいのは、福島新田のお米を昔ながらの釜で炊いたご飯やおにぎり(私も食べたが美味しかった!)のおもてなし。飯山のお米が大きなキーになると私は思う。
さらに、夜は地元酒蔵の日本酒をたしなみつつ伝統的な「富倉そば」を味わい、温泉に浸って一泊する。ぜいたくな人生の癒やしの一時・・・。
地域のそば打ちの会の方々や、民宿や温泉の関係者、無農薬有機野菜の生産者等の志ある方たちと連携すれば、上田市稲倉の棚田とは違う方向を打ち出せると考える。飯山市役所がその接着剤となって欲しい。
私は、さらなる飯山と上田の交流を思案している・・・
一つの糸口は、飯山市の重要な文化資産・正受庵を興した道鏡慧端は、松代城主真田信之(幸村の兄)の子で、飯山城にて出生したと伝えられている。
飯山と上田は「真田」で昔からつながっている、のだ!
この記事を書いた人

-
長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
この投稿者の最近の記事
【長谷川正之】2023年11月22日「地方創生とSDGs」(2)CO2排出問題
【長谷川正之】2023年11月15日「地方創生とSDGs」(1)「持続可能」を考える
【長谷川正之】2023年7月24日「突然の携帯メッセージに思わず涙」
【長谷川正之】2023年7月12日「これは本物ですか?」