ツマの功名

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朝早くの散歩が妻の日課だ。
5時半頃に出て、6時15分頃には戻ってくる。

雨の日も風の日も雪の日も、よっぽどでない限り欠かさない。
たいしたものだ。
その習性に感謝した話をしたい。

2週間ほど前の日の夜、「明日は大雨になりそう」との天気予報を聴き、少し早めの21時頃に寝た妻。

私は24時近くまでパソコン相手にいろいろ関心ごとを調べていた。そして、雨の音はそんなにしないので、さして気にせず寝たのである。

早朝、妻の大きな声に起こされた。

「お父さん大変!水路から水があふれ、田んぼが海みたい!」

えええっ?寝ぼけ眼(まなこ)で起き上がるが、事態が今一つのみ込めない。

「どの田んぼ?どの水路?」
妻は間髪入れず、

「うちのとなりのとなりの田んぼで、通学道路のところの用水路!」と語気を強めた。

「コロナで川ざらいをやっていないでしょう。ゴミがたまって水路を妨げ、あふれ出ているのよ!」

やっと事態がのみ込めた。

あわてて着替え、長靴を履いて雨が降りしきる中、現場に直行。

思ってもいない大量のペットボトルやトレー皿など、プラスチックゴミや枯れ枝が狭い用水路を容赦なく遮断し、水がどんどん田んぼに溢れ出ている。

まさしく海だ!

これはヤバイと、大急ぎでゴミを道路にあげ水の通りを良くして、ひとまず溢れる水は治まった。

さて、海と化した田んぼの反対側から道路に水が溢れ出ないかヒヤヒヤだ。

排水側は水路側より地面が幾分低いので、道路にあふれ出れば近所の家屋に影響しかねない。

排水状況を確認し事態を見守ったが、30分もたたないうちに水位が下がり始め、一安心(あわてていて、写真を撮るのを失念、残念)。

とりあえず、事の次第を区長に報告。道路にあげたゴミの処理を町役場に頼むようお願いして、出勤した。

朝早くの出来事で、この光景を見ている人はほとんどいない。

いまさらながら、水路の清掃がコロナ禍で出来なかったツケがきたことを肝に銘じた次第。

私は今年、地区の副区長であり、来年は区長を担う。地域の防災は率先して対応しなければならない。

今回、第一報をもたらしてくれた妻の「早朝の習性」に今後も助けてもらうことがあるかもしれぬ。

ここは、ちゃんと言葉に出して妻に「ありがとう」と感謝せねばなるまい。

本当に、ケガの功名ならぬツマの功名(こうみょう:手柄を立て名をあげること)である。  

一週間後、急きょ地区役員で水路の清掃を行った。
氾濫した水路も、普段はどうと言うことのない見過ごしがちなところ。

でも、ある条件下では豹変する。丁寧に草取りをした。備えあれば憂いなし。

海だった田んぼには苗が植えられ、穏やかな風景が広がっていた。

もしあの時、散歩に出かけた妻が気づかなければ・・・。
改めて「妻の功名」、感謝である。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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