【コロナ禍のなかのトークイベント】
昨年開催した飯山農業経営塾(私が塾長)の塾生2人が、2週間前に地区のトークイベントに登場するというので、聴きに行ってきた。
(※「飯山農業経営塾」:ブログ2020.12.10『夜間の「飯山農業経営塾」終了』を参照)
都合で行けない塾生の恵子さんから、その様子を知らせてほしいと頼まれたので、彼女への報告を兼ねてブログに書く。
出来るだけ簡略文としたいので、添付する過去のブログを参照しながら、以下を読んでほしい。
【恵子さんへの報告】
恵子さん、あなたにどう伝えるか、思いが発酵してくるのを待っていたので、遅れてしまい、ごめんなさい。ネット情報も加味して伝えます。
当日は、地区のホールに、50名ほどの(たぶん)参加者がコロナ対策をしつつ集まった。
主催は、飯山市太田地区農業再生センター。「太田地区の将来を語る会」の第1回として開催。
進行役は、メディアで名の知れたフリージャーナリストの内山さん。
3人による基調鼎談が中心で、テーマは「若き農業者の未来設計」。
【登壇した塾生2人】
登壇した一人は、水野尚哉さん38歳、水稲農家。塾生ながら、彼の実績はあっぱれ!
ウィキペディアで「世界一旨い米をつくる男」と紹介され、その分野では著名。恵子さん、知っているよね。
米・食味分析鑑定コンクール国際大会で金賞受賞をはじめ、数々の賞を獲得。
ちなみに、ネット販売では、令和2年産コシヒカリ「708米【蛍】」、価格(税込)【5kg】8,075円。
エーッ、キロ換算で1,600円。・・・なるほど、「世界一」にふさわしい価格。そして、「品切れ中」なのだ!
(※708米は、尚哉の名前にちなんで付けたもの)。
もう一人は、木原翼さん29歳(になったばかり)、果樹農家。
雪深い飯山の地で、誰もが考えもしなかったワイン用ブドウづくりに挑戦中。
2014年に飯山市ワインぶどう研究会を発足させ、会員数90人ほどの会長を引き受けた。
恵子さん、個性豊かな若い二人の経歴は、塾生の発表会等でおおよそ把握しているかな。
ここでは、3人の鼎談の内容はさておき、全体から感じた二人の共通点を探り、彼らの未来設計を、私の解釈で以下述べてみたい。
【2人の取り組み】
尚哉さんは、長野調理製菓専門学校を卒業後、地元の大規模農業法人で米作りの基本のきを学ぶ。
そして、おじいちゃんの田んぼも受け継ぎ、「地球を守り・家族が笑顔で健康になる米作り」を目指す。
試行錯誤を繰り返し、出会ったのが「ピロール農法」。
バクテリアによる強い土台作りを核とした農法で、育む米は体内とほぼ同じ弱アルカリ性(通常、米は弱酸性)。
専門学校時代に学んだ栄養学の知識が役立ち、取り組みを決意。
さらに、無農薬・無肥料・追肥なしにも挑戦し、受賞へとつながる。
疑問に思ったことは試してみるのが彼のやり方。
意外に思うかもしれないが、毎日育つ稲に話しかけることも彼の流儀である。
しかし、彼が目指すのはけっして自己満足ではない。
「自由に一緒に大地に負荷をかけない、かつ栄養価の高い旨い米を作ろう!」という、同じ志を持った仲間づくりである(たぶん)。
彼は現在、仲間を求めオーナー制度に取り組んでいる。
カフェや民宿等とつながりながら、豊かな飯山市を残していきたいという。
一方、木原翼さんは、大学でマネジメント学等を学び、起業を考える仲間と出会い、大いに刺激を受ける。
そして卒業後、父親の提案する「ワイン用ブドウ栽培」への取り組みを志す。
(父親はなぜ豪雪地で「ワイン用ブドウ栽培」を目指したか:ブログ2017.10.7『「戦略思考学」(下)』を参照.その前の2017.10.『「戦略思考学」(上)』も面白いよ!)
前例がない豪雪地・飯山でのワイン用ブドウづくりは、挑戦のしがいがあると思った翼さん。
彼は栽培の師匠と巡り会い、貪欲に学んでいる。
父親を知っている私は、「この親にして、この子」とうなずくのだ。
近く飯山ワインが飲める日が来ると期待しているが、それが最終目的ではない。
翼さんは、地域の戸狩温泉の宿泊とスキー等の観光をつなげる農業として、ワイン用ブドウづくりが大きな呼び水になると考えている。
【共通するのは、「コモン」プロデュース力】
尚哉さんは、地球環境(大地)にやさしく、かつ上質なコメ作りを志す仲間と一緒に地域を豊かにしたい。
翼さんは、豪雪地のワイン用ブドウづくりでブランド化し、地域の異業種仲間とつながり豊かにしたい。2人は、同じ方向を目指していると私は思う。
そこで、私が思うことは・・・
2人の活動する地域は、コモン(共有地)という意識ではないか。
なぜそう思うのか・・・
尚哉さんの話しには、「おじいちゃんの田んぼを受け継いだこと」、「家族の健康や幸せのための農業」の話しが多く出てくる。
翼さんも、お父さんの話を引き受け、ワイン用ブドウ栽培によるワインづくりで、家族が営む蕎麦打ち民宿とつなげ、顧客増を図りたいと願っている。
「家族」の幸せが根底にあっての農業なのだ。その家族の同心円上に共有地がある、と私は思う。
飯山市太田地区で、同じ志を持つ仲間と米づくりやワイン用ブドウづくり(耕作放棄地の再生)を通じて、顔の見える範囲で、信頼を拠り所に共に豊かに生きる共有地をつくっていきたい、との熱い思い。
その「コモン」を創造する力、プロデュース力が二人には期待されていると思う。
コロナの時代に大切な、人と人が支え合う場を創る力。
【5年前にブログに書いたこと】
そういえば、5年前にブログに書いたことを思い出した。2016.6.30『「プロデューサー」ということば』で、私はこんなことを書いている・・・
辞書で「プロデューサー」を調べると、「映像や音楽・広告作品等の制作全体を統括する責任者」。
一方、英語辞書では、producerは「生産者」という意味。
リンゴ生産者はapple producer 、ぶどう生産者はgrape producer 。
2人には、日本語の意味でのプロデューサーとして、「共有地を創造し豊かに生きる統括責任者」の役割を担ってほしいと切に期待する!
「コロナ時代こそ田舎の時代」と言われる先駆けとなってほしい!
長くなったけど、恵子さんへの報告とします。
さて次回、塾生たちと同窓会で会う時には、だれか「○○プロデューサー(生産者)」の名刺を私に見せてくれることをひそかに期待している!(笑)
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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