ネギとイネの共生

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ネギ「おい、イネ君、はじめて言葉をかわすけど、いつから俺のとなりに生えているんだ?」

イネ「ハイ。僕は、ネギ君がタネから芽を出し苗として植えかえられた時、藁(わら)として敷かれたんだ。

ネギ君がだんだん育って土が盛られたときに土中に埋まり、それでお役御免のはずだったんだけど・・・」

ネギ「そうだよね。ネギとイネが一緒に育っているのはほとんど見たことない。

たぶんだけど、今年は雨が多く降ったので、たまたま藁に残っていたモミ(籾)から芽が出て育ったんじゃないかな」

イネ「そうかも。今年は大雨で、ほとんど水田という時期があったよね。僕にとってはいい環境だったんだ」

「僕は、しがない何本かのイネなので、ほっとかれるか雑草のように抜かれるか。ネギ君のこれからは?」


ネギ「俺は、冬に抜かれて、鍋に入れられ人間に食べてもらうのが使命。美味しい、甘いといって食べてほしい。
そしたら、“ネギ冥利”に尽きるというもんだ」

イネ「ならば、一緒に生きられるのも、限られているね。

あそこに生えているオクラとナスは来週抜かれるようだよ。
大雨でほとんど水田状態の中、よく生き残って次々に実をつけていたね。たいしたもんだ。お役目、ご苦労さん!」

ネギ「となりの田んぼを見てごらん。シラサギじゃあないか。このところ、よく見かけるね。


草刈り後の休耕地で虫でも食べているのかな。一人でこれからどこに飛び立つんだろう。

今はつかの間の休息か。みんな、身近な自然の中で何となくつながって生きているんだね」

イネ「僕は藁になる前、きっと大勢の仲間のイネと同じ景色を見ていたんだと思う。
でも今は、ネギ君と一緒に生きているこの“特別の関係”が何物にも代えられないし、楽しい」

「僕はなんとネギ君と一緒に生きているんだ、と大きな声で自慢したいな。大雨のおかげだね」

ネギ「俺も同じ思いだよ。俺と君が出会えたのは、“ご縁”というらしい。今日はいろいろ話せて嬉しかった。明日も一緒にどんな景色が見れるか楽しみだ。

じゃあイネ君、明日の朝までお互い寝るとしよう。おやすみ・・・」   

イネ「風が気持ちいいネ。明日もお日様と一緒に起きよう。おやすみなさい」

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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