前回のブログの続き。
【前回のブログで書いたこと】
選果場に隣接する直売所で格安のリンゴを購入し、家に帰って切ってみたら多くが腐っていた。
これでは、購入者が不満を持ち返金を求める等のトラブルになりかねない。
何らかの手をうったほうがいいという内容。
【トラブルへの対応】
そこで、すぐ思いつく対応としてチラシを入れたらどうか。リスクを考え、あらかじめ相手(食べる人)にしっかり伝えるのだ。
「選果外の格安提供品です。痛み等のリンゴが混じっているかもしれません。その場合は農家の応援団のお気持ちで、ご寛容をいただければ幸いです」などとメッセージを記す。
少なくとも怒りを多少とも減ずる可能性はあると思うのだが。
さて、前回のブログの最後に、「今度は私自身が生産者として問われる立場になる。何が起こったのか・・・は次回に。」と記した。
周りから、「なに、どうした?次回が楽しみ!・・」等の思わぬ反応があり、少々困惑している。
たいした内容ではない、とあらかじめ火消しをしておきたい(笑)。
では、ことの次第を書いていく・・(深呼吸して)・・ 。
【キャベツの大玉を栽培】
今年は、あるつながりから大変珍しいキャベツの品種・札幌大球(さっぽろたいきゅう)の苗が手に入り、6月に植えた。
札幌伝統野菜であり、昔から越冬用の大玉(直径50センチ・15キロほど)として作られていたが、生産者は減少。市場流通はしていなく希少価値がある。
有機肥料を入れ生育中、肥料を葉面散布する必要があると教えてもらったが、ずぼらな私は指示通り行わず、「無農薬有機農産物」だからいいと思っていた。
道ばたに植えたので目立つ(大型ネットのトンネル仕立て)。
大きくなっていくさまが通行人の目を引き、じろじろ立ち止まって見ている。
しばしば“生産者は私です”と名乗り出たい衝動にかられた(人間としての器が小さい・泣)。
防虫剤も散布せず、追肥もせず9月になっていよいよ大きくなってきたところで、天(かみさん)の声。
10月には白菜や大根を植えるので、収穫してちょうだい。こんな大きいキャベツをどなたにやるの?
私は10月までは収穫を我慢しようと思っていた(もっと大きくしたい、という童心から)。
が、総合的に判断してあえなく従うことに(写真は7㎏ほど。右側はスーパーのもの1㎏。比較のため、わざわざ買った・笑)。
【獲って、持って行った先は】
私なりに、侍学園(若者の自立支援施設)と、大家族の料理研究家、近所の子供の多いお宅など、持って行く先は想定している。
タダとはいえ、もしキャベツは余っているといわれたら気持ちが凹むので、予告してある。
決まっている先に届け、大きいと驚かれ感謝された。気持ちがはればれ。
我が家でも一玉を食べた。柔らかくて美味しい、気分を良くしていた。
【ここからが本題】
そして、ここからが・・・「生産者である私が問われる」展開に・・・。
一週間後、残っていたキャベツを獲り、我が家用に使うため包丁で切り始めたところ、虫食い葉っぱがあらわれ、葉をむいてもむいても被害が顕著になる。
こんなはずでは・・・なかった。
家で食べる分は、大玉だけに何とかなったが。獲るのが遅かったかな・・・。
ここで、私の心に大きな心配事がこつ然と現われる。
そういえば、侍学園や料理研究家に持って行ったが、今までなら「美味しかった」と即電話やメールでお礼の言葉が返ってくるのだが、今回は音沙汰なし。
【追い打ちでさらに心配拡大】
妻からは、「大玉だけに虫食いの部分が多いと始末に困る!」と直球でグチられる。
聞くうちに、持って行った先で、大玉キャベツの虫食い葉っぱを大量に処理しているシーが浮かんできた。
さらに、こころの中で一人会話が続く・・・
「無農薬有機栽培は虫食いリスクが避けられない。渡すとき、巻いているキャベツの中に虫食いがあるかも、でも無農薬有機なので安全です。となぜひと言いわなかったのか」
「相手は、タダと思って有難くもらったが、こんな余計な手間がかかるとは。それも大量の生ゴミ発生、アーアと思っているかも」
「でも、実は虫食いが多かったなんて言ったら、長谷川さんの思いを邪険にするようで悪いし、と黙っているのではないか」
頭の中で一人会話がグルグル回る。結論は、「2日~3日待ってみよう」。
【渡した先からの反応】
渡した先からの反応は、待ったが・・・無かった。ならばと、おそるおそるライン等で聞いてみる。
「この間持って行った大玉キャベツ、虫食い等はなかったですか。有機無農薬なので、少し心配です」。
返事は即あり。
「ごめんなさい、言うのが遅れて。柔らかくて甘くて美味しかったです」
「すぐ調理係に回してしまったけど、何も言ってこないので大丈夫と思う」等。
よかった、何事もなくて。
何かあっても、私をおもんばかって言わないかも、と考えすぎるのはやめよう。まあいいか。
【生産者として問われること】
たとえ家庭菜園のものをタダであげる場合でも、「傷や虫食いや腐っていたら」というリスクは大いにありうる。
生産者の立場にたって、リスクを考え、あらかじめ相手(食べる人)にしっかり伝えることが大切と思う。
生産者はやはり「食べる人」を思い、「食べて美味しい」と言って欲しいのだ。
それならば、家庭菜園従事者でも生産した責任を自覚しないと。
食べる人が喜んでくれて、ファンになってくれれば、確実に地域農業(家庭菜園を含めて)は豊かになっていく!
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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