恩師に教わったこと(上)

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私には恩師というべき方が3人いる。

お二人は亡くなられているが、そのうちのお一方・戸田忠雄先生の命日が20日ほど前だった。仲間とお墓参りに行ったが、その時の話をしたい。

【戸田先生と私との関わり】
そもそも戸田先生との関わりは、高校時代に「現代社会」を教わったのが最初。

次に行き会ったのは、先生が所用で私が勤務している組織を訪ねて来られ、退職後大学予備校校長をされている先生と30数年ぶりに再会した。

そして、先生の要望に応えるべく奔走したことを覚えている。

その後は、私が54歳の時に31年間勤めた組織を選択定年で辞め、大学院に学ぶ決意をした際に相談に乗ってもらった。

先生が客員教授をされている大学院大学を教えてもらい運よく合格(英語の勉強が大変だった)。

東京のマンションを借り政策研究科「まちづくりプログラム」で学び、なんとか公共政策修士を取得できた。

そういえば、名もない私のことを大手新聞の教育エッセー欄に書いてもらい(H君として登場・・笑)、時々読み返し励みになっている。

【先生との苦い思い出】
戸田先生は厳しい方でもあった。今でも苦い経験として思い出すことがある。

大学院での先生の授業のとき、教育学の授業だったと思うが、論語の話になり、いきなりある文章の意味を聞かれた。

まさか私を当てるとは思っておらず、漢文も苦手でありしどろもどろしていたら、露骨にこんなことも答えられないのかという突き放す表情をされ、若い同級生の前で恥をかくはめに。

当日の夜は、一人やけ酒を飲んだ記憶があるが、今はほろ苦く懐かしい(笑)。

【初めて会う仲間】
さて、お墓参りに行った仲間は計7人。私を含む男性3人は、今まで何度も会っていて気心も知れている。

今年のお墓参りは、戸田先生を恩師と慕う他のグループの方も誘い、結果4人の女性と一緒に行くことになった。戸田先生のご縁である。

【他のグループの方も誘った理由】
私たち男性3人は戸田先生を中心にかつて定期的に勉強会を開いていたメンバー。

今回は先生が古典でも特にお薦めの福沢諭吉著「学問のすゝめ」を分担して解説し、議論しようとなった。

せっかくならば、戸田先生に関わった方たちにも声をかけ一緒に学びの場を持とうと話しが発展し実現したのだ。

お墓参り-昼食(レストラン)-勉強会(公民館)というスケジュール。

40代から70代の男女7人、3人が解説し現状のロシアのウクライナ侵攻等も含め活発な意見交換がなされ、楽しい一時だった。

【私たちが教わった「学問のすゝめ」のへそ】
「学問のすゝめ」は初編~17編で構成され、福沢諭吉は西洋の原書等の中から当時の日本人が最も必要な部分だけを選択して書いている。

相互対等・個人の自由の観念、社会契約思想、科学的文明史観等である。

当時の戸田先生勉強会で私が「学問のすゝめ」を取り上げ報告した図がこれ。

A3版で細かいが載せる、真剣に取り組んでいた雰囲気が伝われば・・・(笑)。

その中で今でも私たちが大切にしている言葉として、敢えて二つを挙げる。

一つは、「信の世界に偽詐多く、疑の世界に真理多し」
つまり「信じることには偽り(にせもの)が多く、疑うことには真理が多い」ということ。

まず、習慣やあたりまえのことを疑う。物事の真理に到達するには、異論を出して議論するしか方法はないといっている。

今のネット時代は、同じ意見同士が「イイネ」で同調しかたまりを作り、違う意見の人たちを激しく攻撃するか無視する傾向が強い。

「異論を出し合い議論をして合意を見出すべき」という福沢諭吉の言葉は、現代こそまさに当てはまる

二つ目は、有名な言葉であるが「独立自尊」
自他の尊厳を守り、何事も自分の判断・責任のもとに行うこと」を意味する。

明治維新の時代、日本が欧米列強に伍していくには、まず日本の独立を保つことであり、それには日本人一人一人が独立自尊の気風によって学問をすすめ、殖産に励むことが必要と福沢諭吉は説いた。

ある知識人は、「日本人気質は、キョロキョロ(周りを気にする)、ビクビク(自信がなく不安)、ゾロゾロ(同調する)」と自嘲気味に語っている。

「独立自尊」とは真逆である。

明治の混乱がそのまま続き全体主義に流れ、第二次世界大戦敗戦後も現在に至るまで福沢諭吉の「独立自尊」が日本人の精神に活かされることはなかったといわざるを得ない。

「外交という手段で日本の平和を守る」と多くの人が言うが、独立自尊の人間でなければ外国人と対等に渡り合うことなどできるはずがない

また、「協働」というが、一人一人が行動し判断できるからこそ、多くの人とつながって大きな力になる。

協働は一人一人の独立自尊が前提だが、往々にして他者によりかかり頼っていないだろうか。予定調和的に力を出し惜しみしてはいないか。

【今こそ福沢諭吉の言葉を噛みしめよう】
現在は、コロナウィルス禍やロシアのウクライナ侵攻等、世界的に激動の時代だ。

戸田先生が導いて下さった福沢諭吉の言葉を噛みしめ、残りの人生を「独立自尊」と「疑の世界に真理多し」の考え方を基軸に歩んでいきたい

来年の命日も仲間と先生の墓参りに行く。

そして、昨日は、もう一人の亡き恩師の命日だった。

墓参りに行ったのだが、そこで考えたことを次回(「恩師に教わったこと(下)」)に記す。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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