300回記念として(笑)、今まで書いたブログの中から読み返したいものを選んで(自選)、今の自分がコメントする。
この作業は、過去の自分を振り返り、新たな自分を見出すためであり、あなたにもつきあってもらえれば嬉しい。
第1回は、書き始めて1ヶ月経った2016年5月の2回の内容。少し長いので一部要約して記す。
商談会とは、生産者と実需者の代行者(バイヤー)が出会い、その後、同じレールを敷いて走っていけるかどうかやり取りする場です。
一回では終わりません。ならば、どう出会って次につなげるか。
私の言いたいことを、ある事例で説明します。
私が6年前東京の大学院に通っていた時、昼食でよく通ったうどん屋がありました。
特段変わったメニューや味がすこぶる美味だったわけでもないのに、なぜか繁盛しています。
間もなく理由がわかりました・・・
うどん屋で働く2人の女性(30代~40代でしょうか、たぶん)の応対です。
お客は入って席に着き注文して食べ、勘定を払う。問題はそのあとです・・・そう別れ際。
勘定処と出口までの5メートルほどで起こる出来事です。
まず、1人の女性がお客様の背中に向かって「ありがとうございました。」と声掛けします。
さらにもう1人が戸を開けて閉めるまでにもう一度「ありがとうございました。またよろしくお願いします」と発するのです。
最初は、第一声で終わりと思っているところに思いがけずもう一回声掛けされるので、丁寧だなと思っていました。
たまたまかなと感じましたが、行くたびに全員にしているのです。
明らかに意識した連係プレーです。時間をかけて作り上げてきたルーチンワーク。
これは価値あるサービスと思います。
かけられた方は元気が出て、とても爽やかに外に出ることができます。
たとえ普通の味でも、気分的に「美味しかった」に変わり、また来ようとなるのです。
味は心理作用で変わります。
この女性2人の声掛けは、お客様が去る場面でのことに大きな意味があります。
縁あって、うどん屋という共通の場で一緒に過ごしたということ。
また同じ道=レールを走りたい、また来ていただき食事の時間を作り手と食べ手として共有したい、という思いが込められていると思うのです・・・私は。
商談会も同じです。
今後もお付き合いしたい(成約したい)と思えば、うどん屋の出口までの時間(勘定は終わっているが共通の場は終わっていない6~7秒間)を、商談会後の2日間と想定。
声掛け=電話やメール、FAX、手紙を出し、アクションを起こすことです(優先順位は必要ですが)。
うどん屋の女性も商談会の参加者も共通するのは、終わりを始めと捉え、つながりたいという「執念」を示すことです。
前回のうどん屋に続き、ある旅館の事例をお話しします。
一般の旅館ホテルは、お客様のチェックアウト後、お見送りをします。
お辞儀をして手を振って見えなくなるまで続けます。ほとんどの旅館はここで終わり。
次のお客様の対応に移ります。
しかし、ある旅館の女将の行動は違っています。
このアクションのおかげで、リピーターが非常に多くなり、安定経営につながっています。
その行動とは・・・
見送った後、すぐ事務室に戻り、あらかじめ用意してあったペーパーをFAXします。
このペーパーにどんなことが書かれているか予想できますか。
それは・・・
「前略 長谷川様ご家族様 お帰りなさいませ。
当旅館にご家族でお越しいただき有難うございました。
不行き届きがありましたら、何卒お許し下さいませ。
実は、お見送りした後心配しております。
お帰りの上信越自動車道の混雑がテレビニュースで放送されていました。
また、天気予報では、お住まいの長野県は梅雨前線により強い雨とのこと。
無事お帰りになられますよう念じております。
また皆様にお目にかかれます日を、従業員一同待ち望んでおります。
とりあえずの思いをFAXさせていただきました。
乱雑乱文をお許し下さいませ。 早々
5月22日15時30分 上田旅館女将 真田丸子 」
このような雰囲気の内容です(文章の添削はグッと我慢していただきたく・・・笑)。
しかし、多くの皆さんから、こんなことは忙しい中で無理、との即答が聞こえてきそうです。
しかし、あらかじめ様式を準備しておいて、当日空いている時間で書き加えます
(天候やお客様の体調を気遣う内容、天気が良ければ、それはそれで書きます)。
FAXですから、簡単な用件のみで。
直筆が良いのですが、今はパソコンの筆文字でなら即書き加えられます。また、FAX番号は予約の際お聞きしておきます。
受け取ったお客様の反応はどうでしょうか。
疲れて夜遅く家に帰ってきたら、FAXで旅館から先回りした挨拶と自分たちの帰りを心配するペーパーが届いている。
この旅館(女将)は、お客様である私たち家族が無事に家に着くまで心配りしてくれているんだと感激するでしょう。
実際、リピート客が多いことからわかります。
確かに、簡単にできることではありません。
私が以前、中小企業診断士として旅館ホテル経営者の皆さんに研修でこの話をした時、実行した人は20人中ナント1人だけでした。
皆さんが無理なくできることで付加価値は付きません。感動もしてもらえません。
お見送りした後から始まるのです。
やはり、お客様の喜ぶ顔が見たいための「執念」と思います。
ここでのまとめ⇒「終着駅(えき)は始発駅(えき)、そこから執念というレールを敷いて、利益(えき)に行き着きましょう」
この文章を読んで当時を思い出し、今の私に刺さった言葉がある。
無理なくできることで付加価値は付きません ・・ウーム・・・その通り。
6年前にちゃんと書いていたのか。
一旦終わったら、ピリオドをうつのではなく、次につながる仕掛けを考え行動すること。
行動すれば目的が生まれる、ということを今まで意識してやってきた。
また、「執念」ということばも大切にしたい。執念を持って、しあわせを呼び込む。
「執」の字には幸が組み込まれている、と気付きたい。
最後に、このブログを読み返し、改めて昭和生まれの私は「演歌の力」に感謝する。
北島三郎が歌うこの歌詞のなかでも、好きなこのフレーズを掲げる。
「希望を捨てるな生きてるかぎり
どこからだって出直せる
終着駅は始発駅」
コロ禍の今こそ、この歌をうたえ、若者よ!!
この記事を書いた人

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長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
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