持続可能な自転車屋さん

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0

前回のブログから1ヶ月近くたってしまった。

このところ書いている「自選ブログ」シリーズはチョット休止。最近、遭遇したことを記す。

【自転車のタイヤの空気が抜けた】
私は、近くは普通の自転車を使って動き回る。
何回かパンクをしたときは、近隣の自転車屋さんで直してもらう。

この間も乗ろうと思ったら車輪のタイヤがぺしゃんこなので、いつもの自転車屋さんに持って行ったが、あいにく先客がいて時間がかかりそう。

さてどうしたもんかと思案していたら、お店の女性店員さんが出てきて声をかけてくれた。

【空気が抜けた原因】
タイヤの空気が抜けてパンクかなと思ったので直してもらいたいと話すと、チョット待ってと、車輪を回してタイヤの状況を確認し始めた。

次にバルブのキャップを外して虫ゴムを取り外し「すり減っていてこれが原因です」と、新しいものに取り替え空気ポンプで空気を入れて終了。都合3分ほど。

【連続する驚き】
手際のよい仕事に感謝、感謝。そして代金は入らないという。

エーッと驚くが、タダではチョットと思い、「いざという時のために空気入れポンプを購入します」というと、店員から思わぬこんな言葉が返ってきた・・・

「3,000円ほどするので、使用頻度があまりないポンプは買わなくてもいいんじゃないですか
またまた、エーッと驚く。さらにこの驚きは続くのだ。

彼女は「代わりに、これを利用してもらえれば」と建物の脇に設置されているボックスを指さした。

自転車用工具・ポンプが入っているので、ご自分で自由に使ってくださいネ」。
何という対応かと感心した(他のお店を知らないせいもあるけど)。

一年ほど前に来たときはこんな対応はなかった。この間に何があったかは知らない。

もちろん、人手不足等で簡単な修理や作業は顧客に自らやってもらうことは、お店にとってもメリットがあるだろう。

自販機にはドリンクの他、チューブやパンク修理用品など、緊急で必要な商品も取り揃えている。

しかし、私は店主が自らのお店の存続を真剣に考え、コンセプトを明確化したのではと思うのだ。

仮に、この自転車屋さんが使命を「自転車で日常生活の幸せづくりをお手伝い」としたならば、「自転車用工具・ポンプ入りボックス」の無料提供も納得できる。

HPを見ると、「身近な街の自転車屋さん」とあり、「通勤、通学はもちろん 幼児車・子供車、電動アシスト自転車 スポーツ車も取り揃えています」。

日常生活での自転車利用を全面的にアシストする姿勢がうかがえる。

【持続可能は何によってもたらされるか?】
今、「持続可能な社会づくり」が関心をよんでいる。SDGsはいいのだが、ことばのみが先行しており、地に足のついた行動はまだまだだ。

この自転車屋さんの対応を振り返ってみて、「持続可能」をもたらすには何が大切か、考えた。
私の脳裏に浮かんできたのはこの一言

・・・「信頼関係」・・・

この自転車屋さんは、多くの企業が指向する「何もかもサービスをマネー化する」というビジネスモデルではない。

街の人たちが「日常的に自転車を通じて豊かな生活を送って欲しい」という気持ちが強いと思う。

自転車の虫ゴムの無料取り替え、ポンプは購入してもらうのではなく無料利用してもらう、という顧客との「信頼関係づくり」を基軸にしているのだ。

だから、街の自転車利用者たちは顧客となってこのお店を支えようと思うに違いない。

今度、店主と話す機会を持ちたいと思っている。

「持続可能とは?」を具体的に考えるヒントを与えてくれたこの自転車屋さんに、感謝である。

この記事を書いた人

長谷川 正之
長谷川戦略マーケティング研究所所長

1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加