【きっかけ】
1月に、若い友人から「長谷川さん、ある会でお話をしてくれませんか?」といわれ、いつもの即答「任せなさい!」(笑)。
東御市社会福祉協議会・生活就労支援センターで、何らかの事情で就労していない皆さんに役立つ話しをすることに。
さて、どんな話しをしよう?(いつも決めてから考える)
【事前に参加してみる】
マーケティングに関わる私は、聴き手(=顧客)を満足させるには、相手の聴きたいことをリサーチし、話しをどう組み立てるか考える。
今回は、担当者からのお誘いもあったので、リサーチを兼ねて事前にその会に参加してみることにした。
そして、あえて「相手を知ることはほどほどにしよう」と思ったのだ。なぜか?
【聴き手をリサーチし過ぎないこと】
聴き手には個別のいろいろな事情があって、職に就けていないという。デリケートな問題もあろう。
ならば、聴き手の共通事項を探りフィットする話をしよう、と考え過ぎない方がよいと判断した。
「私が話すことの中で一つでも心に残ればOK」というスタンスでいきたい。
お話会の担当者が醸し出す「ゆったりした良い雰囲気」を大切にしたい、とも思ったのだ。
【ならばどんな話しをするか】
事前の会の後の打ち合わせ時に、話すテーマがふと浮んだ。そこで提案したテーマとは・・・
「過去は変えられる!エッどういうこと?」
発音してみて、自分でも変わったテーマと感じたが、スタッフの皆さんもキョトンとしている。
参加者のマスク越しの顔や動作・雰囲気を眺めながら、直感的に思ったことだ。
自分自身の人生でキツかったこと、それが後で自分の役に立っている経験を3つ素直に話そう。
加えて、私が年に何回かやり続けている読み聞かせもの本も紹介したい。
何かしら感じてもらえればラッキーという、気楽な自由な感じで話そう(ごめんなさい)。
幸い、スタッフたちが了解してくれた(ありがとう)。
【強風の坂道を会場まで歩く】
当日は、最寄りの駅から40分ほど歩いて会場の福祉センターに向かった。
ちっぽけな私が彼らの役に立つ話しなどできるのか、という思いが心に忍び寄ったが、当日の強風の上り坂を黙々と歩くことで力をもらい、雑念は吹き飛んだ。
【進め方】
私のお話会の聴衆は、スタッフを入れて10名ほど。
前半は、私が小学校や児童館で読み聞かせをやっている本の中から2冊を紹介する。
後半は、私の人生で3つほどの出来事(修学旅行、ボランティア、退職)を話す。
最後に、私が大切にしている言葉を伝える。
【本の読み聞かせは紙芝居で】
〇「どろんこサブウ」という本は180頁なので、児童館でやるときは26枚のパワーポイントにまとめ読み聞かせをしている。
今回は、パワポデータをA3・26枚ラミネート加工の紙にしてもらい、紙芝居形式で行なった。
多大な労力をいとわず作ってくれた担当者に感謝。
あらすじをひと言でいえば、「千葉県に住んでいる一人の男が干潟のゴミを拾った話」だ。
それは、想像を絶するゴミとの格闘であり、それが何をもたらしたかを伝えたかった。
〇絵本「バスが来ましたよ」は、昨年、地元小学校で読み聞かせをし、反響の大きかった本だ。
バスで市役所に通う盲目の男性を、小学生がリレーしながら10年以上もサポートした話。
寄せてくれた児童の感想文も紹介した。
一つだけあわてたことがある。当日朝、読み聞かせの最後の練習をしたとき、本のページがめくれない。
どうして?指がさらさらでめくれない(皮膚に脂がない、高齢化)。
近くのスーパーに行き薄手のビニール手袋を購入、やってみるとグッド!(笑)
滞りなく本をめくれ、2冊とも聴いた感想を書いてもらい、発表、意見交換をした。
まとめは、自ら自然にやれることを、淡々とやり続けること。そうすると、自分が変わり関わる人も変わる。
参加者は大きな刺激をもらったと感じた。
次に、後半の私に起こった3つの出来事と、そこから学んだことをアバウトに書き記す。
【中学校の修学旅行での出来事】
今から50年以上前のこと。東京への修学旅行は、男子生徒は4班で行くことになった。
班分けは、選出されたリーダー4人が教室の4隅に立ち、他の生徒が希望のところに行って決める。
私はリーダーの一人に選ばれた、が、想像できないことがまっていた・・・
男子生徒たちは、他の3人のリーダーのところへ全員が行った。私のところには誰も来ない、ゼロ。
頭が真っ白に。心臓がドキドキ。消えてしまいたい。
少したって、何人かが移って来てくれた(正直あまり覚えていない、忘れたい心理が働いているのだろう)。
大きなショック。男子全員からイジメられたと思い、深く傷ついた。
孤独で心を閉ざし、このキズが長く尾を引いた(他人には気づかれまいと心の奥底にしまった)。
しかし、大人になりいろいろな経験をし、私はこの出来事から次のことを学んだ。
「一人でいても、さみしくない男になれ」「徒党は組むな」「集団に依存しすぎるな」。
この出来事は、「仲間からのイジメ」ではけっしてなく、「一人でもしっかり立つ(生きる)」を学ぶ機会だったと解釈が変わったのである。過去は変えられるのだ(時間がかかったが)。
【大学のボランティア活動での出来事】
大学時代、福祉施設でボランティアをしていたときのことである。
泊まる機会があり、中2の男子と一緒にベットで寝ていた時、彼が子ども時代に施設に入ったいきさつを、小声で淡々と話してくれた。
私は翌日アパートに帰ってきて、徹底的に酒を飲み、涙を流し、酔い潰れた。
私は彼の深い悲しみを抱えながら淡々と話す姿勢に、ショックを受けた。
彼に比べ、私は何とささいなことでクヨクヨしている人間なのか、彼は中学生ながらすごい、と強烈に思った。
その後、長らくたってふと気づいたことは・・・「若い人からも学ぶ大切さ」である。
それには信頼関係がないとできない。彼は私を信頼してくれたから話してくれたのではないか。
今、私は60歳後半だが、圧倒的に若い友人が多い。20代から40代が7割を占め、男女半々くらい。
中2の彼からベッドで聞いた経験は、「中学生の彼はすごい」から、さらに「若い人との対等な人間関係づくりの大切さ」を学ぶ機会だったと解釈が深まったのである。
過去は変えられるのだ。
長くなってしまった。後編に分けて続ける・・・
この記事を書いた人

-
長谷川戦略マーケティング研究所所長
1955年生まれ、長野県埴科郡坂城町出身。長野県信連勤務後、政策研究大学院大学で公共政策修士を取得。長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。また、小学校PTA会長や地域活動にも積極的に取り組む。現在、中小企業診断士・公共政策修士として「長谷川戦略マーケティング研究所」を立ち上げ、企業や行政のマーケティング支援に従事している。落語鑑賞が趣味で、「上に立つより前に立つ」や「やってみなければ幸運にも巡りあえない」という言葉が好き。
この投稿者の最近の記事
【長谷川正之】2023年11月22日「地方創生とSDGs」(2)CO2排出問題
【長谷川正之】2023年11月15日「地方創生とSDGs」(1)「持続可能」を考える
【長谷川正之】2023年7月24日「突然の携帯メッセージに思わず涙」
【長谷川正之】2023年7月12日「これは本物ですか?」